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女性用風俗店オーナーに聞く「“女性の性欲”って何ですか?」(後編)

【スペシャルインタビュー:「SPA White」あす香さん×森林原人(後編)】

女性用風俗店オーナーに聞く「“女性の性欲”って何ですか?」(後編)

 

 

「性愛の本質」を探求し続ける森林原人が、女性用風俗店「スパホワイト」オーナーのあす香さんにインタビュー。

 

2回連載の前編では、女風ユーザーと交流する機会も多い彼女が感じている女性達のニーズや、それを叶えるべく自店のキャスト達に指導している心構え、性感テクニックを惜しみなく公開!

 

後編となる今回は、あす香さんご自身の性体験や男性不信、風俗勤務など、“性”にこだわり続け、女性用風俗店を立ち上げるに至った人生の軌跡について、赤裸々に語っていただいた。

 

性への好奇心が旺盛だった子ども時代から、恋愛とセックスに悩み葛藤した思春期を経て、「女性の性の悩みを聞ける大人になろう!」と決意された胸の内に迫りました。

 

 

父親のパソコンでAV鑑賞。早熟だった子ども時代

 

森林    インタビュー前編では、あす香さんが感じているいまの女性用風俗業界やお店の話を中心にお伺いしましたが、ここからは、主にご自身の性遍歴から、なぜ女性用風俗のお店を立ち上げようと思われたのかという辺りを伺っていきたいと思います。早速ですが、ご自身の“性の目覚め”はいつ頃でしたか?

 

あす香    もしかしたら衝撃的な内容が続くかもしれませんが、正直にお答えしますね。性に目覚めた時期は、幼稚園の年中の頃でしょうか。もう自分の身体を触ると気持ちいいことを知っていたので、夜になると布団に潜って“お医者さんに手足を拘束され触られる”という妄想をしていましたね(笑)。

 

森林    自由を奪われるのがよかったんですか?

 

あす香    そうですね、特に理由は思い当たらないのですが。

 

森林    一説には、子どもの頃にテレビで観た“ナントカレンジャーのピンク”が敵に捕まりピンチに陥る姿に自分を投影しているという話もありますね。

 

あす香    それは私も聞いたことがあります。確かに、戦隊ものはよく観ていました。あとは、小学生3・4年生の頃、時々「お腹が痛い」と学校をズル休みしていたんですが、その時によく父親のパソコンでAVのサンプルを観ていました。

 

森林    へえ〜、そうなんだ!(笑) AVでも女性が攻められている作品が好きだった?

 

あす香    そうだったと思います。医者とかコンセプトものが好きで。

 

森林    マッサージものが好きな女性は多いのですが、いかがでしたか?

 

あす香    マッサージものは、今は好きですが、その頃はあまり見つからなかったかも。典型的なコスプレものが多かったかな(笑)。

 

森林    年中さんから自分の身体を触っていて、オナニーをしたのは何歳くらいでしたか?

 

あす香    たぶん、小学校4年生くらいかな。

 

森林    早いですね。その頃、オーガズムは感じていましたか?

 

あす香    うーん…。イケなかった記憶はありませんが、特にイクことに固執していた覚えもないですね。

 

森林    でもその場合、男性からすると「どうやって終わるの?」という疑問が湧くんですが。

 

あす香    疲れたり飽きたりしたら、かな…。スパホワイトのお客さまからも「プライベートでイケない」というお悩みは頻繁にお伺いしますが、私自身は、“イク”ことを意識し始めたのは男性と絡み始めてからです。男性が「イッて欲しい」と求めてくるから、こちらもそれを意識する。それまでは、イク・イカないに関係なく気持ちよかったし、たぶんイったこともイカなかったこともあったと思いますが、だからと言って、イケなくて悩んだりすることはなかったように思うんです。

 

森林    ということは、“イク”という概念は男性主体の性行為が生み出したものですかね? たとえば、お店のお客さんのクチコミで、イケたことを喜んでいる人はどのくらいいるんでしょう?

 

あす香    1割もいないんじゃないでしょうか?

 

森林    じゃあ、女風利用の満足度とオーガズムは必ずしもセットじゃない?

 

あす香    利用目的は人それぞれという大前提はありますが、それでも、必ずしもセットではないと思いますね。

 

 

 

高校時代に渋谷で決意した「女性の性の悩みを聞ける大人になろう!」

 

森林    早熟な幼少期のなかで、小学校高学年くらいになるとさらに第二次性徴が起き、自分の欲望を顕著に感じるようになりますよね。その性の欲望は、現実では身近な異性に向いていったんですか?

 

あす香    そうですね。セックスにも興味津々だったので、初体験は中学1年生でした。相手は、初めてつき合った同学年の彼でしたね。

 

森林    それは早いね!

 

あす香    もともと下ネタ友達だったのがつき合うことになり、お互いにエロが大好きだったので、セックスしたくてウズウズしていたんだと思います。いま考えると危ないなと思いますが、部活動の帰り道、畑の中でビニルハウスに寄りかかりながら…。

 

森林    え、外〜?!(笑) 横たわりもせずに?

 

あす香    若かったので体力があったんです(笑)。あとは、学校が休みの日のプールサイドとか公園の滑り台とか…。

 

森林    主に外?(笑) お互いの家とかではなく?

 

 

あす香    家には親がいましたから。ただ、悲しかったのは、半年後にその彼に振られてしまったんです。しかも、振られる前日までセックスをしていたのに…。それまで、私の性の価値観は少女漫画に培われていたので、セックスは当然好きな人とする行為だと思っていました。なのに、セックスした翌日に振られたということは…、あれ? 彼は私のことを好きじゃない状態でセックスしたということ? もしかして身体が目的だったのかなとショックを受けて、そこから20代前半まで「男性はどうせヤリたいだけでしょ」という思いを引きずることになってしまったんです。

 

森林    そうなんだ、それは長いね…。

 

あす香    高校や専門学校で素敵な男性とおつき合いしたこともあったのですが、PMSなどで精神的に不安定になると「どうせ本当は私のこと好きじゃないんでしょ!」とネガティブになって試し行動をとってしまったり。そういうことを、20代前半まで繰り返していましたね。

 

森林    ちなみに、専門学校では何を習っていたんですか?

 

あす香    エステです。

 

森林    なぜエステに興味を持ったの?

 

あす香    中学生で「男性はどうせみんな身体目的なんだ」と思い込んでから、かなり遊んでいた時期があったのですが…、高校2年生の時に出会い系をやってみたら大人の男性とマッチしたんですね。食事に行こうと言われて会ったら車で家まで連れて行かれて、めちゃくちゃ抵抗したんですが、コンドームもつけずにセックスされたんです。

 

森林    それは…、性暴力だよね。

 

あす香    いま思えばそうですね。それでその後、私は当時使っていたガラケーで一生懸命アフターピルを調べたんです。膣外射精ではあったものの、一瞬でも生で挿入されたら妊娠の可能性があることは知っていましたから。渋谷の道玄坂に身分証明書がなくてもアフターピルを処方してもらえるクリニックを見つけて、わざわざ電車で1時間以上かけて行きました。無事に薬をいただけたんですが、その時、その婦人科の先生が私のことを怒らなかったんですよ。当たり前だったのかもしれませんが、当時高校生だった私は、出会い系を利用して見ず知らずの男性の家に行った結果、レイプされてしまったのは自分が悪いという気持ちがあったので…

 

森林    医師の前でそこまで詳しく話すの?

 

あす香    話さないんですが、自分では後ろめたさがあって。それまで、セックスの話は親にもしてこなかったし、友人にも相談できなかったので、そこで初めて自分のしたことを開示できたことに安堵したのか、クリニックの玄関を出た途端その場にへたり込んでしまって。涙がブワ〜っと…。

 

森林    安心したんだね。

 

あす香    その時に、私は「自分は大人になったら、女性の性の悩みを聞ける仕事につこう!」と心に決めたんです。

 

森林    道玄坂で決意したんだね。

 

あす香    それから進路を決めるのに、心理カウンセラーや学校の先生、剣道をやっていたので警察官もいいかなと色々と憧れましたが、勉強が得意ではなかったのでどうしようかなと。そんな時、母に「私はエステティシャンになりたかったのよ」と言われて、なるほどエステティシャンなら女性の悩みを聞けるかもしれないとピンときました。学校も都内だし、自分も痩せそうだし最高じゃんと思って(笑)、エステを学び始めたのがはじまりでしたね。

 

 

 

風俗を始めた理由は、男性の“性欲の正体”が知りたかったから

 

あす香    男性用の風俗店でキャストとして働いた経験もあります。風俗を始めた理由は、中学2年生から続くトラウマを払拭したかったから。男性はなぜ好きでもない人と性行為をできるのか知りたかったんです。ちょうど、当時おつき合いしていた人と別れたタイミングでもあったんですよね。

 

森林    風俗にも色々あるけど、どんなお店だったんですか?

 

あす香    手コキ店です。性病に罹りたくなかったので、風俗の中でも粘膜同士の接触のないジャンルを選びました。

 

森林    実際に風俗で働いてみて、男性の性欲の正体は掴めたんですか?

 

あす香    入店した後、本業がエステティシャンということから風俗講師もしていたのですが、その店では「研修コース」という私と研修キャストのふたりでお客様につくメニューがあったんです。多くの女の子の接客やプレイを間近で見ながら、「男性ってこういうことに喜ぶんだな、すごいな」と色々なことを感じましたね。

 

森林    男性は何を求める人が多かったですか?

 

あす香    それはお客さまによって違うのでひと言では言えませんが、ただ、男女問わず相手の方と向き合う際は、“受け取りたい人/与えたい人/同じレベルで向き合いたい人”がいることに気がつきました。

 

森林    “受け取る”とは、具体的に何を受け取るんですか?

 

あす香    会話や立ち居振る舞いでのやり取りと、触れ合いでのやり取り、どちらの場合もありますが、私は触れ合いの方が得意なのでそのケースでご説明しますね。たとえば、お客さまが“与えたい人”だった場合、手や身体で相手と触れ合う際にも“受け取る意識”でプレイを進めていきます。感覚的な表現になりますが、相手のリズムを尊重し自分が相手の鍵を受け止めて喜ぶよう、大きな鍵穴を用意して相手の鍵を請け負っていくイメージです。相手の方がその時の感情にフィットする鍵を差し込んでくるので、それを喜び尊重します。また逆に、相手が“受け取りたい人”だった場合は、相手のリズムを尊重するところまでは同じですが、焦らしを中心に、その方が持っている鍵を探りながらたくさんの穴を用意して相手に提供し、いちばん合致する鍵穴に近づけるように触れてみたり。開けたいトビラを開く鍵が見つかったら、それを大切に持ちながら新たにしっくり来る鍵穴を探しに行ったり…。そういうことを、性器だけでなく手のひらや身体の接触面でもやっていくんですね。

 

 

森林    “与えたい”は支配欲ということですか?

 

あす香    支配欲が強い場合もありますが、“喜んで欲しいから与えたい”という方もいらっしゃいます。さらに、その欲求は波打つんですね。最初は与えたかったけど、やっぱり僕も受け取りたいなと途中からシフトしていく方もいらっしゃいます。これは男性だけでなく女性も同じですが、欲求とはそんな風に揺れ動くものなのだと感じました。

 

森林    なるほど、繊細ですね。ところで、エステティシャンと風俗キャストの二足のわらじを履いていた間、ご自身の性欲はどのような状態でしたか? 「色々な人と色々なことを楽しみたい」のか「ひとりの人と深く掘り下げていきたい」だったのか。

 

あす香    その点は、完全に「好きになったひとりの人と深く追求していきたい」方ですね。ただ、男性不信が募って不安定になっていた時期は、男性から求められることに安心して一夜限りの関係を持つこともありましたが。

 

森林    たとえば、そのたったひとりの好きな人が、セックスが下手だったり合わなかったりしたらどうですか? 好きなら許容できると思う?

 

あす香    そうですね…、実は、私は主人とはセックスが合わないんですよ(笑)。

 

森林    え〜?! こんなにもセックスを大事にされてそうなのに? それなら、なぜ結婚されたんですか? セックスじゃない部分に惹かれたということ?

 

あす香    人生観が似ているんです。お互いに仕事が大好きで、四六時中働いていたいタイプ。だから、一緒に居てラクなんですよ。それともうひとつには、中学生からずっと引きずっていた男性不信を主人との関係性のなかで解毒できたところがあって。

 

森林    どんな風に解毒できたんですか?

 

あす香    主人とつき合っていた時期にいつもの精神的な不安定期がやって来たんですが、他の男性と関係を持った結果、妊娠してしまったことがあったんです。悩んだ末に堕ろすことを選びましたが、当然、主人には振られるだろうと覚悟していたら、事実を正直に伝えても、なぜか別れようと言われなくて。その時、私は初めて「この人は、私を身体だけでは見ていないかもしれない」「セックス以外のつながりを大切にしてくれているのかもしれない」と素直に感じられたんです。結局、主人と結婚して子どももでき、幸せに暮らしている現在があるので、いまではすべての経験があってよかったことだったのかなと思っています。

 

 

女性のセックス観は、この先もっとアップデートできる!

 

森林    少し話は戻りますが、あす香さんは子どもの頃によくAVを観ていたんですよね?その頃はまだ女性向けAVというジャンルもなかったし、AVと言えば基本的には“不純なセックス”を映し出していたと思うんです。だけど、思春期のあす香さんは、少女漫画のようなロマンティックなセックスに憧れていた。子どもの頃に観たAVは、その後のセックス観に影響を与えなかったんでしょうか?

 

あす香    AVで観ていたセックスはわりと激しいものが多くて、私自身はいまでも激しいスタイルを求める方なので、影響は受けていると思います。たとえば、女風を利用するにも当日予約派ですし、男性もテストステロン満々なタイプが好みですね。スパホワイトとはかけ離れすぎていますが(笑)。

 

森林    えっ、そうなんですか(笑)? でも、スパホワイトに来るお客さんの気持ちもわかるんですもんね?

 

あす香    スパホワイトを立ち上げた動機は、私自身の性欲とは離れたところにあるんです。これは私の勝手な主観ですが、いまの日本では、まだまだ女性が性について語ることを許容されにくい社会構造があると思います。女性として淑やかにしていることを求められる風潮のなか、誰にも性の悩みを吐き出せないことが苦しい。私自身もそうでしたし、そういう女性はきっと多いのではないかと考えています。もしかしたら純粋な“性欲”をもとに考えれば、もっと面白いお店も作れるかもしれませんが、そういうことよりも、女性が性に悩んだ時に相談できる場所があるといいよねと思っているんです。

 

森林    道玄坂から続いているんだ…。

 

あす香    それともうひとつ、私は小学生の頃から、社会における男性的な部分を担いたいという意識が強いようで。長女だからなのかもしれませんが、男性性が強めの女性なんじゃないかと感じています。当時は「LGBTQ」や「性同一性障害」といった言葉はありませんでしたが、自分は男子なのだろうかと自己がわからなくなり苦しんでいた時期も。大人になったいまは、日によって男性性/女性性の比重が変わる感覚があり、自分ではそんな揺れもいいなと思っています。心の中に性の二重構造があったからこそ、この業界にたどり着いた部分もあるかもしれませんね。

 

森林    なるほどね…。それでは、最後にお聞きしたいのですが、あす香さんは、セックスにおける挿入行為にはどんな意味やエネルギーがあると思われますか? スパホワイトさんは粘膜同士の接触がないお店ですが、たとえばこの先、医学が進歩して性病や妊娠の心配が解消され、法律的なハードルもなくなったとしたら、本番までするお店は増えると思いますか?

 

あす香    凸と凹が組み合わさる状態は、それだけで“愛がある”という錯覚を起こすものかもしれません。本来は、愛と下半身は必ずしも一致していないと思いますが。性病や妊娠の不安がなく法律がクリアになったとしたら、本番をする女風店は増えると思います。ただ、そうなるとどうしてもプレイの空間が男性主体になりがちな現状があるので、女性の満足度から離れていってしまう懸念がありますが。昔、福岡の中洲にあった女性用ソープランドも確か7ヶ月ほどで閉店しましたしね。

 

森林    でも、現状でも女風のなかで本番行為は起きていますよね。男性主体の空間になってしまうとしても、むしろその状態を望んでいる女性も少なくないのではないですか?

 

 

あす香    これは個人的な見解ですが…、いまの日本では、女性主体のイキ方を知らない方が多すぎるのかもしれません。“男性にリードされてこそ女性である”と社会から刷り込まれている部分があるのかもしれませんね。たとえば、Twitterで「SとM、どちらの男性セラピストがいいか?」というアンケートを取ったことがありますが、9割以上が「Sがいい」と回答されていたんですよね。もしかしたら、“女性は男性以上に性の価値観が限定的”という見方もあるのかな、と。もっと自分自身で自分の快感を上げられるようになると、より公平なエネルギーのもとで、自分が本当にしてみたいセックスが見えてくるかもしれませんね。

 

森林    「Sの男性がいい」の内訳は、必ずしも「支配されたい」「調教されたい」のSではないかもしれませんね。単に「リードして欲しい」くらいの感覚なのかなと。

 

あす香    本当は、お互いにバブになれるといいんですよね。ふたりで赤ちゃんみたいになってしまえたら、性の空間はもっと楽しくなるんじゃないかと思います。

 

森林    セックスって、相手に完全に委ねることができた時、もっとも深い快感につながっていくと思うんです。交わるふたりの双方に包容力があるといいですよね。女性の場合は母性、男性なら“頼り甲斐”とかそういう表現になるのかな。それらをふたりの間で行ったり来たりさせられると、きっともっと深いところにまでたどり着けるんでしょうね。

 

あす香さん、今日は貴重なお話を聞かせていただき、どうもありがとうございました!

 

 

 

(ゲストプロフィール)

あす香 (あすか)

 

女性用風俗店「SPA White」のオーナー兼セラピスト。美容専門学校を卒業後、外資系エステサロンに勤務。マッサージはCIDESCOをはじめ5つの国際資格を所持。「女性の悩みを聞きたい」と立ち上げた女性用風俗店「スパホワイト」は、粘膜同士の接触がなくIライン(性器まわり)にも触れない独特の施術が話題に。現在はIラインに触れるブラックコース、女性セラピストのマリンコースも。

https://spa-white.jp

 

取材・文/環子